※この記事は3/27日時点での情報を元に記載しています。
この数日で東京の感染者が急増し、いよいよ東京・関東圏のロックダウンが現実的になってきました。
弊社は医療機関、特にクリニックの支援をしておりますが、現場の医療機関でもこの新しい感染症への対応については本当に苦労しており、なんとか少しでも医療機関の負担を減らすことができないかと悩んでいます。
現状は、診療所でできることは少なく、
- 新型コロナの疑いが強い患者には帰国者・接触者相談センターへの連絡を案内する
- 感染の疑いがある患者はなるべく他患者および医療従事者側へ感染を拡大しない対策を講じる
ぐらいのことしかできません。
しかし、帰国者・接触者相談センターに相談しても、結局近くの診療所の受診を案内されて、対応に苦慮しているクリニックも多くいらっしゃいます。
このような状況において、現場の最前線となるクリニックで実践できる対応について少しでも参考となればと思い書かせていただきます。
なお、こちらの内容は感染症の専門家で、弊社WEB問診のユーザ様でもあるグローバルヘルスケアクリニックの水野院長がご出演になっている、下記Youtube動画の内容を参考にさせていただいております。
目次
受診にあたっての患者のインフォメーション
まずは、一番避けるべきなのは、「疑い患者」が通常の患者と混じってしまうことだと思われます。
そのためにも、新型コロナウィルス感染の疑いが強い場合には、必ず事前に来院前にお電話いただくようホームページ等へ掲載することが望ましいと思います。
また、ホームページを確認せずに直接来院されてしまう患者様もいらっしゃるので、入り口に貼り紙や立て看板などでも掲示することが望ましいかと思います。それでも来院してしまった患者様は、院内にはご案内せず、一旦外で対応することが望ましいと水野先生はおっしゃっています。
事前トリアージ(疑い度合いを必ず確認する)
疑いのある患者様には、厚生労働省等から出ている相談の目安に従い、感染リスクに応じたクリニックの対応方法をご案内しましょう。
厚生労働省からアナウンスされている新型コロナウィルスに関して疑いを持つ目安は、下記のとおりです(3月27日現在)
・風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている。(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある。※ 高齢者や基礎疾患等のある方は、上の状態が2日程度続く場合https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000596905.pdf
また、こちらは日本耳鼻咽喉科学会からのアナウンスですが、問診で下記を確認することを推奨しています。
(1)下記症状がないかの確認37.5℃以上の発熱/熱が出るので解熱剤で対応している/のどが痛い/咳が出る/痰がでる/息苦しい/体がだるい(2)新型コロナウイルスに感染した人と濃厚接触がありましたか(3)今回の症状が出る前の2週間以内に新型コロナウイルスが多発している地域や外国に行きましたか(4)最近、感染者が多発したライブハウス、スポーツクラブ、介護施設、老人ホーム、お祭り、クルーズ船などの施設あるいはイベントに行きましたか(5)治療中の病気はありますか(特になし、糖尿病、心臓、呼吸器、腎臓、免疫抑制治療、がん、抗がん剤、その他)
あわせて、この数日で出てきた情報として、「新型コロナウィルス感染者の症状として味覚障害・嗅覚障害を訴える患者が多い」との報告が韓国の調査や、イギリス・アメリカの耳鼻科学会での発表においても出されています。
上記鑑別とあわせて、味覚異常・嗅覚異常の有無も確認すると判断材料のひとつとなりえるかと思われます。
できれば、トリアージは来院前にできることが一番望ましいです。
疑いの濃厚な患者の無駄な移動も避けられますし、なにより医療機関での感染も避けられます。
そのためにも、是非とも、事前のWEB問診や遠隔診療は活用してほしいです。
この1ヶ月、トリアージすべき状況が日々刻々と変わっており、WEB問診をやっている弊社でもできる限りタイムリーに問診変更の対応を行っています。少しでもリスクのある患者の無駄な来院を避けるためにも、本当は100%の患者がまず問診を入力してから来院するようにしてほしい。そう願っています。
通常の患者と一緒にしない
感染リスクがありつつ、診察を行う場合に、通常の患者の診察時間となるべく分けて対応されることが望ましいとされています。通常の診察時間を少し縮めて、時間帯を2つに分けるのが現実的な対応策かもしれません。
接触感染のリスクを避ける
大分の医療センターでの院内感染の報告でもありましたが、感染者が触れたタブレットや医療機器を通して感染した疑いがあると伝えられております。
できる限り、患者が直接触れる機器を減らす、触れたものは必ず都度消毒する、という対応が必要と思われます。
患者が触れる可能性が高いものとして
- 問診票(紙やタブレット等)※このあたりもWEB問診は患者のスマホで行ってもらうので、有用だと思っています。
- 体温計
- ドアノブ
- 椅子
などがあるかと思います。
クリニック側で取れる対応としては
(1)患者には来院直後にまずは手指消毒を必ずしてもらう
(2)患者が触れるものをなるべく減らす
(3)患者が触れやすい場所を都度消毒
あたりかと思われます。
これらの対応を予めスタッフとも決めておくことが必要かと思います。
その他:診察や検査における対応
他にも上記動画にて、グローバルヘルスケアの水野先生も触れてらっしゃいますが、診察や検査においても下記の様な対応が望ましいとおっしゃっていますので、ぜひご参考になさってください。
・アイシールドがあると望ましい
・検体検査などはできれば診察室以外で(環境汚染を避けるため)
・患者がマスクをしていない場合、少し距離をあける
・診察の前後の手指消毒および患者の触れる場所の消毒を毎回行う
受診される患者側にお願いしたいこと
とはいえ、新型コロナウイルスにおいては、しっかり隔離できたり、検査を行うことができる医療機関は本当に限られています。クリニックレベルでできることは決して多くないというのが現状です。
クリニックには日頃から通っていらっしゃる患者様も多く、そういった非感染者に感染のリスクを拡大しないためにも、感染が疑われる患者側の対応が一番重要です。なによりもこういう時には医療者に感染を拡大させないことというのが国家としても一番大切なことです。それは、別に医療従事者を特別扱いしているとかそういうことではなく、今回の件でたぶん多くの人が気づいたとおり、国家として医療者も含めた医療資源というのは有限であり、その有限な資源をなるべく効率的に利用しないと圧倒的に不足してしまうからです。その意味でも感染が疑われる場合にむやみに移動や外出を避けることがなによりも重要だという認識をひとりひとり持てたらと願っています。