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未来の薬局

調剤チェーン座談会
−アイセイ薬局×ココカラファイン−

この三回ほど、調剤薬局個店のインタビューをさせていただきました。

第一弾 大手に真似が出来ない独立型調剤薬局<ライフバランス薬局>

第二弾 小さな薬局でも、人材育成は超一流<八幡西調剤薬局>

第三弾 「病気をの治す」ことへのこだわり<高山薬局>

もともとの主旨は、2016年のかかりつけ薬剤師の制度や健康サポート薬局など、薬局改革元年と呼ばれる新しい制度が出来たことで、「これからの調剤薬局はどうなっていくのだろう」という純粋な疑問、そして大手チェーンが増えていく中で個店はどうやって対抗していくべきなのか?ということが知りたくて、面白い取り組みを行っている個店にインタビューさせていただきました。

一方、いろいろな調剤薬局の方とお話する中で、「個店だけでなく、他の調剤チェーンさんは何を考えているのか」を聞きたいというご要望もいただきました。それなら、調剤チェーン同士で対談してみよう!ということで座談会を企画させていただきました。今回の座談会には、こちらの二社にご参加いただきました。


会社名:株式会社アイセイ薬局
本社所在地:〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-2-2 丸の内三井ビルディング
店舗数:334店舗(グループ連結・平成29年8月1日現在 ホームページより抜粋)

<参加いただいた方>
管理本部コーポレート・コミュニケーション部の堀さん、事業本部健康サポート薬局企画推進部の糠谷さん、風間さん。(敬称略)


会社名:株式会社ココカラファイン

本店所在地:〒222-0033 神奈川県横浜市港北区新横浜3-17-6イノテックビル
店舗数:1,304店舗 うち調剤取扱店249店舗(平成29年3月期決算説明会資料より抜粋)

<参加いただいた方>
調剤事業部事業推進チーム 坂本さん、佐川さん(敬称略)

まずは両社の概要から

アイセイ薬局、左からコーポレート・コミュニケーション部の堀さん、健康サポート企画推進部の糠谷さん、風間さん

初顔合わせの両社。まずは両社の概要からお話いただきました。アイセイ薬局さんから。

aisei
アイセイ薬局は創業昭和59年で青森から広島まで、関東・名古屋・関西に店舗が多い調剤専業チェーンです。334店舗で基本的な形態はマンツーマンですが、その中でもクリニックモール型の形態に特徴を持っています。門前の展開も多少はありますが、顔が見える付き合いを重視しています。
調剤薬局の店舗形態として大きく分けると、門前、マンツーマン、医療モール、という3つの形態に区分することができます。門前は大学病院などの大きな病院の前にあるような調剤薬局、マンツーマンは街中のクリニックなどに近接しているような調剤薬局、医療モールは一つのビルなどに複数の医療機関が入居していてその一角にあるような調剤薬局をイメージしていただくとわかりやすいかと思います。

ココカラファイン 調剤事業部の坂本さん(左)と佐川さん(右)

cocokara
ココカラファインはもともとは関東中心のセイジョーと関西中心のセガミとがホールディング会社を作ったのが始まりです。その後、東海が中心のジップドラッグ、兵庫のライフフォート、北海道のスズラン、新潟のコダマなどがグループとして参画しました。日本全国に約1,300店舗、内調剤店舗は約240店舗です。

ありがとうございます。それぞれ自社の特徴はどのような点だと感じていますか?

aisei

アイセイ薬局が発行しているフリーペーパー「ヘルス・グラフィックマガジン」。2015年グッドデザイン賞も受賞。

当社はマンツーマンやモールの割合が高いことからも、ドクターとの連携がわりと出来ているのかなと思っています。あとは、コーポレートコミュニケーションの取り組みは他の調剤チェーンと差別化する特徴のひとつかなと思います。コーポレートコミュニケーションでは、看板のデザインやホームページなど、生活者の目に触れるあらゆる部分のデザインを親しみやすいものにしていくことを目的としています。サイトだけでなく一枚のチラシに至るまで細かいクオリティコントロールをしていますし、自社でフリーペーパーを出したりもしています。(ヘルス・グラフィックマガジンの取り組みはこちらに詳しく書かれています。)

ココカラファインさんの強み、特徴ってどんなところだと感じていますか?

cocokara
ドラッグストアで成長してきた部分が大きいので、やはり店舗数が多くドラッグストア併設店があること、それでいて、一店舗あたりの調剤の処方箋応需枚数も決して少ないわけではなく応需枚数月間1000枚以上の店舗の割合が高いところだと思います。
cocokara

1年に1回ココカラファインが主催するイベント。サンプリングや検体測定会なども開催し数千人が立ち寄る規模だとか。

他のドラッグストアチェーンと比較して、医薬品や化粧品など専門性の高い商品の売上構成が高く、調剤に対してもきちんと向き合っていると感じています。調剤でイベントをやる、と言った時にも会社をあげて全面的に支援してもらえており、店舗での健康相談会や大規模商業施設での健康イベントなど、大小さまざまな健康イベントを積極的に開催しています。

健康サポート薬局に対する取り組みと悩み

まずは、昨年(2016年)より始まった健康サポート薬局への会社としての取り組みについて、状況や抱えている悩みなども聞いてみました。

aisei
健康サポート薬局には診療報酬点数がつかない()と言われているので、御存知の通り業界的にも温度差があるように、社内でも意見はマチマチです。そういうこともあって当社では、店舗やエリア担当者からやってみたいと要望があった場合に本部が支援する、という形を取っています。
cocokara
当社としては、将来を見据え取り組んでいくべきテーマだと思っています。ただ、健康サポート薬局とそれ以外の薬局がどのように違うかという点をこれから見せて行かなければならないと感じています。

健康サポート薬局を取った店舗で何か違いなどは現れましたか?

aisei
健康サポート薬局を取った店舗ではスタッフの方々のモチベーションは上がったと感じます。ただ我々の問題は、ココカラさんのように、OTCとか物販などがまだまだ強くはないので、この点の支援をしていってようやく効果が見えてくるのかな、と思っています。
cocokara
おっしゃる通りで、あくまで行政上のルールとして健康サポート薬局が取れても、本当に目指すべきは地域の皆様に明確に貢献するということだと思っています。今はまだ地域の方からも表面上も何も違いが見えないので、目に見える形で健康サポート薬局はここが違うというところを打ち出していかないといけないと考えています。
aisei
何かノボリとか看板とか、そういうわかりやすいものから入るのも大切なのかもしれないですね。

店舗での物販について

両社の話は、健康サポート薬局から、物販の話にも。

aisei
ココカラさんでは、全ての調剤店舗でも物販はやっているんですか?
cocokara
調剤薬局全店舗で物販を行っています。店舗の規模に応じて商品点数の大小はありますけど、一番小さな店舗でも棚4段くらいのスペースで商品をセレクトして置いています。調剤事業部に物販の担当者がおり、棚のレイアウトを決めて展開しています。OTC医薬品だけでなく、エクエルなどのサプリ、他にも減塩食品なども置いている店舗もあります。
aisei
うちも遅ればせながら物販を少しずつ始めているんですが、商品としてどういう選定をしてよいか悩んでいて。でも、商品を置くことで、スタッフと患者さんのコミュニケーションが生まれて、そこから健康相談につながったりという効果も。ただ、現場としてはただでさえ調剤業務で忙しい時にあまり余計な事に手を取られたくないという本音も(笑)

薬剤師の採用や教育

昨今は、どこでも薬剤師の採用に苦労していると思いますが、そのあたりどのように感じていますか?

aisei
大学回りをしているとここ最近感じるのは、ドラッグストアを志望する学生さんが(調剤を志望する学生と比較して)増えたなと。理由としては、1つはお給料の面もありますけど、もう1つには授業の中にもセルフメディケーションの内容が増えてきましたし、OTCなども経験したいという学生が増えたからだと思います。
aisei
あとは、中途採用でも、かかりつけ薬剤師の制度ができた頃から、薬剤師の意識が「一つのところに定着したい」という方向に変わってきていると感じます。
cocokara
採用だけでなく、採用後に現場に配属された後の育成面も課題で、まだまだうまく連携できていないところがあります。育成の部分で大切になってくるのは、薬局長もですが、薬局長の上司である、数店舗を担当する統括薬局長が重要な役割だなと思っています。ちょっとした相談事を聞く時間を持てているか、店舗に少しでも顔を出せているかによって離職率が変わってくると思います。

薬剤師の方のモチベーション向上などで何か取り組んでいることなどありますか?

aisei
例えば、うちの場合だとヘルス・グラフィックマガジンに監修などで薬剤師に顔写真入りで出てもらったりしています。そこに結構出てみたいという声は頂きますね。薬剤師によっても領域ごとで得手不得手があるので今後は公募のようなこともやってみたいなと思っています。
cocokara
当社もホームページにいろいろなコンテンツを定期的に出しているんですが、この編集に関わった薬剤師、ということで店舗スタッフを全面に出すようにしています。薬剤師にとっても、自分が属している会社が良いコンテンツ出している、新しい事をやっている、ホームページが綺麗だということは誇りに思ってもらえるので、その点を意識して対応していきたいとは思っています。イベントやコンテンツ作成では現場を全面に出していきたいと考えています

事務職の活用がこれからは重要

cocokara
今の薬剤師は、在宅にも行かないといけない、健康相談も、ジェネリックの対応も、と、私が薬局で薬剤師業務を行っていた頃とは比べものにならないくらい薬剤師の業務量は増えています将来的に薬のピッキング業務が非薬剤師にも認められる可能性があり、その場合でも何らかの資格は必要となるでしょうから、今事務で入社して来たスタッフにも登録販売者の資格をなるべく取得してもらうように進めています。
aisei
先ほどの健康サポート薬局の取得に動いてくれた店舗でも、医療事務スタッフがすごく積極的に動いてくれて患者さんへの声がけなどもやってくれている店舗があります。薬剤師の方は時間的制約が大きい中でやっていただいているので、いろんな部分で医療事務の方に分担してもらい、薬剤師は本当に薬剤師が必要となる領域に集中してもらう、クリニックのドクターと看護師と同じようなスタイルになると良いなと思いながらいろいろと試行錯誤している部分はありますね。

両社のサイネージへの取り組み

ここで少し話題を変えて、両社のサイネージの取り組みをお伺いしました。
アイセイ薬局は2015年11月から、全店で店頭サイネージの導入・運営を開始し、ココカラファインも新店を中心に試験的導入を進めています。(両社とも弊社のサイネージの仕組みをご利用いただいております)

アイセイさんは、サイネージを始めた経緯は?

aisei
弊社は「ヘルスデザインカンパニー」と謳っているので、健康啓発の情報発信を積極的にしていこうと取り組んでいます。そのひとつが先ほどのヘルス・グラフィックマガジンなんですが、薬剤師を介しての情報伝達は時間も工数もかかりますし、待ち時間も10分ほどはあるので、その間にコンテンツを流そう、ということが発端です。最初はテレビが見たい、という話も店舗からはあって苦労はしたんですが、今はだいぶ定着してきて情報も伝達出来ているのかなと思っています。
cocokara
当社も、情報発信に関しては動画を活用したほうがインパクトがある、ということで動画による情報発信としてのサイネージをスタートしました。最初は他社の製品を使ってみたんですが、そこだとコンテンツも全て自分たちで作り続ける必要があり、企画から始めなければならないということで運営上難しいと判断し、既存コンテンツが充実しているメディアコンテンツファクトリーさんのRx-Channel(もとはコニカミノルタが運営していた時から)を採用させていただきました。当社としては、一番は窓口で伝えきれない情報、会話が難しくて伝えていない情報などをサイネージを利用して伝えていきたいと思っています。
aisei
webが隆盛の時代にやはり紙媒体も含めたアナログの媒体やこういった動画メディアは、効果検証は非常にネックになりますね。一方で動画単体でいくとメディアパワーはすごく強い。個性もしっかりあって、見てもらえるまで作り込んでいけるものだとは思っています。今後は物販の販売にどの程度寄与できるか、ということも検証していきたいなとは思っています。

最後に。両社が思う「未来の薬局」

最後に、両社が考える、未来の調剤薬局はどうなっているか、どうなっているべきなのかについてもお伺いしました。

aisei
保険制度側の話としては、店舗数を今の半分の規模にしていく、という話も出ているので、そうなっていくだろうなとは思います。少しずつ課題が出されて、その中でついていけるところが生き残るんだと思います。一方で、生活者側の視点で行くと、調剤薬局がまだまだ「お薬の交換所」から脱却できていない部分もあるので、どこまで生活者にとってメリットのある場所として打ち出していけるかということが課題だと思っていますし、健康サポート薬局なんかもそういった部分に意識を向けてくださいというメッセージだと受け取っています。
cocokara
将来的に薬局が集約されていくにあたって、店舗の面積は大きくなっていくだろうと思っています。処方箋業務に加えて、健康・予防・未病の部分で血液検査だけでなく、例えばインフルエンザ検査などの迅速検査や予防接種なども薬局で行えるようになっていくような制度改正・法改正もあり得るかと思います。

最後に皆さん並んで一枚。ご協力ありがとうございました!

個店だけでなく、チェーン店側も何を考えているのか聞いてみたい!どうせなら、複数チェーンの座談会形式でやってみたらどうだろうか、と始まった当企画。快くご参加表明頂いた両社の皆様には心より感謝いたします。

実際、スタートしてみたら、それぞれに聞きたいことや業界全体としての問題点などにも触れ、実に2時間にも及びました!(ここに書けないようなオフレコの話なんかも盛り沢山でした笑)
やってみて感じたのは、チェーン店でもやはりそれぞれのカラーや特徴があるし、そのカラーや特徴をいかに現場に落とし込んでいくのか、が非常に重要な点でありつつ、なかなか苦労している点なんだなという事でした。

生活者から見ると、どこも同じような店舗に見えてしまう現状から、どのように今後特徴を打ち出していけるのか-それが、未来の薬局に向けたチェーン店の悩みなんだと思いました。